#319 Memoria

最初に言っちゃうと、スモールビルで、こんなに泣くことがあるとは想像していませんでした。
ルーサー親子に肩入れしてみているから、よけいにそうだったんだと思うんですけどね。
なにしろもう…。

ちょっと待って。本当に知りたいですか? 実際に見るまで、とっときますか?
注意にあるとおりネタバレです。オチがばれます。

もしネタバレがおいやでしたら、このままブラウザを閉じるかブラウザの「戻る」でお戻りください。
っていうか私としては、こうして書いてはいますが本当は各々の目で確認して欲しいほどのエピソードなので、しつこく言います。


ほんとうにいいんですね? はっきりネタばれしますが、いいですね?




失われた七週間の記憶を取り戻すために、レックスはドクターガーナー(ライアンに虐待的実験をしていた変な博士。"Delite"でも登場した)の治療を受けて、小さい頃のトラウマになった体験を思い出すんですが、これが、誰も来なかった誕生日パーティーシーンで、もうこれだけでも涙ほろり。
みんなぼくを憎んでる、っていうレックスに、なんとライオネルは少々ぎこちないながらもレックスの傍らに座って、優しい言葉をかけて慰めるのです。
ライオネル自身も、子供がもう一人できるということで、もう一度やりなおそうと思っていた節があり、ライオネルのヅラは多少気になるものの、感動できるシーンです。
そのときに渡されたのが、第一シーズンに出てきた鉛の箱。母親からのプレゼントだとライオネルが渡して、レックスは「かあさんはもう大丈夫なの?」とすごく嬉しそう。
でも、やっぱりまだ具合が悪いとのことでがっかりする彼に、ライオネルは、箱の由来を話してきかせます。それがセントジョージのドラゴン退治の話。

このシーンのライオネル、すごく話し方が嘘くさい。
物語自体はうまく語ってるけど、おまえ、その箱にまつわる話として、いま思い出したんだろって感じの話し方で、ひょっとしたら、ライオネルはプレゼントの中身を知らなかったのかもしれない、で、ふたをあけたらわけのわからない古い箱で、とっさに理由を考えたのかも……。
いや、これはあくまで私の印象で、多分、事の真偽はこれからもわからないとは思うのですが。
あと、ひねくれた考え方をすると、リリアンがあの箱を選んだのはレックスへの警告かも。
ルーサー家は外見は頑丈で立派だけど、中は空っぽよ、って。

で、クラークなんですけど、あの行動、信じられない。なんで行くの?
ライオネルに揚げ足取られて、恥ずかしいじゃないか…。
この番組はいつから、スーパーマンの若かりし頃の恥ずかしい体験告白大会に。

なんだかんだでライオネルの罠にひっかかって、大変な思いのクラークだけど、そのあたりは、それでもちょっとレックスの精神や体を思いやっての行動だと思いたい。
いや思わせてください。クラークを嫌いになるのに疲れました。どうせ最後はスーパーマンになるんだし。
レックスから、自分が大切に思ってる人を犠牲にはしないなんて宣言されて、生みの母の名前も思い出して、マーサからも愛されて幸せなクラーク。

それにひきかえ…。自分が引いた引き金とは言っても、自分で封印していた過去の記憶を取り戻してしまって、レックスはターニングポイントを越えてしまった感じ…。

レックスが、リリアンがジュリアンを殺した瞬間を思い出して、その思い出している瞬間に、クラークが後ろにいたのも皮肉だよなー…。
ライオネルがレックスに、ジュリアンを殺したのはレックスじゃなくリリアンだったと知ってたら、自分とレックスの間はもっと全然違っていた、って言うと、レックスが逆説的に「ぼくを愛してたかもしれない」って。
ここで一言ライオネルが、今までも愛してたって嘘でも言えばよかったのに、あまりにも動揺しちゃってか本音が出てなにも言わないのが、もう悲劇そのもの。
で、レックスは"No"って拒絶して出て行くんだけども、もうその二人のやりとりが真に迫ってて、見てるこっちは辛くて辛くて……。
それでもレックスは、あの瞬間まで、ほんのちょっとだけ、ライオネルの愛情の可能性を求めてたのかも。
その最後の希望もライオネル自身が消してしまったんですね。やだやだ…。

レックスは、母親の犯行を庇ったときから、「愛」と「正しいこと」の分け方ができてなかったのかもしれない。
第一シーズンの"ZERO"のときに、友達はなにをしても守るって言ってたけど、それは昔からそうで、しかもその考えが彼の人生を間違った方向へ連れて行ってる。
でもそれは人間の業ってやつで、だからこそなにかの事件のとき、容疑者の家族の証言は採用しないってなってるんだと思うのね。
よく、クラークとレックスの会話に「なんのための友達だよ?」って出てくるんだけど、この意味合いが二人にとって全く違うものなわけですね、多分。

前に私は、レックスにはよきアドバイザーがいないから、って書いた気がしますが、アドバイザーがいても、レックスは聞かなかったでしょう。ようやくわかりました。
彼は、幼児期の万能感を持ったまま、大きくなってしまった可能性がありますね。
だから自分が大統領になるのは当然だし、「自分が好きな人」が幸せなのは当然。
ただ、その全能感を阻む存在がライオネルで、レックス自身もジュリアンの死因について記憶を消してしまってたから、完全に逆らうことができなかった。
でも今回、死んだジュリアンのベビーベッドの傍らにたつレックスの「ぼくを信じなきゃだめだよ」って言葉を聴きもしないで、一方的に殴り倒したライオネルを思い出し、その原因となった、母のジュリアン殺しと、その母の「ジュリアンはいまは幸せ」って言葉も思い出した。

リリアンは確かにレックスとジュリアンを愛していたけど、それがライオネルによって変えられてしまうのを見ていられなかった。
ジュリアンは、家族同士が殺しあわないためのいけにえの子羊だった。
そんな感じでしょうか。そしてリリアンにその行動をとらせた原因が、ライオネルだった。

ライオネルは、リリアンを信用して、本当に彼なりに愛してたみたいです。
…いままでそれも怪しいなと思ってたんですが、リリアンのことをほんとうに愛していたというシーンはあっても、レックスに"love"を使ったことはない気がするので、多分今回の事実は、ライオネルにとっても衝撃的だったでしょう。
これがどうこの先に影響するのか…いや、影響するにきまってるというか、そういうお話なのは百も二百も承知なのですが、どうしても納得したくない。
レックスがかわいそうすぎる。

まあ、あれですか。
血の繋がった実の親子でも、愛がないときがあるし、血は繋がって無くても、たとえすでに遠い場所に行ってしまってても、愛が伝わるときもあると。
……でもここまでレックスをかわいそうにしなくてもいいじゃん………。

しかし。
マイケル・ローゼンバウムのはっちゃけた演技(shatteredとかasylumとか)も、すげーなーと思ってたけど、今回はジョン・グローバーの演技に驚かされました。
いや、いろんな意味で。
なんでライオネルに泣かされなきゃいけないんだ……ちょっと歯軋り。