Strange Visitors STRANGE VISITORS (The Smallville Series 1) 02年10月刊

初めにちょっとした解説のような謝辞があり、物語の冒頭でもこの小説の時点での時間軸や設定などが、エピソードに組み込まれています。
「コズミックラダー」というサイトを持ち、偽医者詐欺をしてまわっていた二人組がスモールビルでの怪奇な事件を知り、カモがいそうだと踏んでやってきたところ偶然にも、ホイットニーの親友で癌に犯されていた青年をクリプトナイトの力で救ってしまい、詐欺がいつのまにかカルト教団めいてきます。それに夢中になるラナの叔母ネルや、この詐欺グループに父が絡んでいると睨んで活動をやめさせようとするレックス、それからもちろん悩める青年クラークの日常が展開されます。後半の半分ぐらいのところで、クラークとレックスのとっても素敵なエピソードが。

父親とピートに、レックスのことを悪く言われて腹を立てたクラークが、母親の作ったパイを一個失敬して、お土産がわりにレックスのところへ持って行き、家にいたくないとプチ家出宣言、ふたりでそのパイを食べます。
その時レックスはクラークをうまくたしなめて、父親が言ってることは正しい、きみの父親を自分は尊敬しているとまで言って、クラークを驚かせます。

ここからとっても因果な話になるわけですが、レックスは、クラークがトラックを返しに来なかったら、つまりジョナサンがクラークにトラックを返すように言っていなかったら、自分たちはいまこうして一緒にいなかったろうとクラークに話すんです。
クラーク自身はあのトラックに未練があったけど、ジョナサンが返してこいと言ったためにレックスに返しにいって、レックスと話をし、友人になった。レックスも、それまで自分の周囲にいた金目当ての人種以外の存在に驚き、ケント一家が天然記念物ものだとほめてます。おおげさだけど、それまでの彼の人生にはいなかったらしい。

つまり、ジョナサンはレックスとクラークが親友なのを嫌っているけど、そのきっかけをつくったのはジョナサン自身であり、弟のような友人を得たレックスにしてみれば嫌う理由はどこにもない。
クラークはこの話を聞いて、さっそく父さんに話して驚かせてやるって喜んでましたが、読んでるこっちは、とっても複雑で頭の中がぐるぐるぐる。

もしあのとき〜していなかったら…ってのは、ありえない話なのですが、もしあのときジョナサンがトラックを返させず、クラークがレックスの屋敷へ行ってなかったら…。レックスは以前のレックスのままだったかもしれなくて、ただ単にひねくれた放蕩息子のままで人畜無害だったかもしれないじゃないですか。

いや、始めにスーパーマン神話ありきなのは、わかってます。
レックスとは絶対に袂を分かつ運命なのも、わかってます。
でも、こうやってその段階をずっと見ていくのは、なんともいえない悲しさがあります。

あまり暗い話ばかりもアレゲなので、明るいお話をひとつ。
プチ家出する前の午後、クラークがレックスの屋敷に相談事を抱えて訪れたんですが、なんとレックスはメインホールの階段をあがったりおりたりして、ダイエットに励んでおりました(その後書斎で二人でビリヤードをやって、クラークはレックスを負かしてしまいます)
ダイエットの話題は、その後のプチ家出の際に、クラークが持ってきたマーサお手製のストロベリーなんたらパイ(辞書引いてなくてわからない)を食べたときにも出て、レックスが「ケント家には秘密がある。こんなおいしいパイをいつも食べてて太らないなんて、脂肪を多く燃やす遺伝子を持ってるんじゃないか」なんてことを言い出します。
マーサのパイ、私も食べてみたい。